ビジュアルデベロップメント

実際に動きを付けながらルックを詰めていく

まごつき Hurray!では「コンセプトアート」を本制作を行うための絵柄の指針として描いています。まずは、ぽぷりかがイメージしている映像表現の雰囲気(ムード)を聞いて描くことが多いのですが、今回は「ポップになるだろうけど上品にしたい」「楽しそうな雰囲気にしてほしい」といった抽象的なオーダーだったので、私のほうで資料をあつめながら、イメージを膨らませていきました。

ぽぷりか 具体的なキャラクターデザインやルックについては、まごつきが描いてくれたコンセプトアートを見ながら、Hurray!の3人で意見を交わしたり、実際に映像を作ってみながらブラッシュアップしていきます。

まごつき 下図が実際のコンセプトアートです。赤を基調に、ういさんのプロポーションはこれぐらいに。そして歌詞を映像としてもしっかりと見せるといった全体的な方針を決めました。そして次に、コンセプトアートを基にキャラクターデザインを描いて、細部のデザインを詰めたり頭身を整えました。

ぽぷりか キャラクターデザインが出来上がったら、ういさんの3Dモデルを作り、ルックデヴを兼ねて実際にアニメーションを作っていきます。今回は作りながら決めていく割合が通常よりも大きくなりました。例えばコンセプトアートでは、ういさんの輪郭線は太めの黒色でしたが、3Dにしたときにその魅力を活かしきれなさそうだったので、線を細くしつつシーン色に近い色へと変更しました。


まごつき氏が描いたコンセプトアート。楽曲から感じた「創作活動に人生を賭ける=丁半の博打」というイメージの象徴として、デザイン要素は和風をベースにした。



実際のカットをイメージして描かれたコンセプトアート。本番では、背景やプロップも加わるため、カットやシーンごとに情報量の整理が行われる。



まごつき氏が描いたキャラクターデザイン図。



キャラクターデザインを基に作成した初期のアニメーション。この頃は、キャラのアウトラインが黒色の太い線だったが、最終的にシーン色に近い色へ変更して、キャラクター、背景、歌詞アニメーションの一体感が高められた。






本作に登場するモブキャラたちのカットと、しぐれういカットを一覧にしたもの。キャラクター設定、シチュエーション、そしてキーカラーに偏りが生じないよう、バランスが取られた。




さまざまな人たちの様子も描く

バリエーションを出すことと3Dと2Dの一体感を意識する

ぽぷりか コンセプトの説明でふれた通り、今回は「色々な人がいる中のしぐれうい」を表現したかったので、40ぐらいのモブキャラクターが登場します。それぞれの設定とシチュエーションを描き分ける必要があったので、モブシーンは3Dではなく、2Dベースで表現することにしました。そこで行なったのが「モブルックデヴ」です。ういさんのシーンは3DCGアニメーションなので、3Dと2Dで印象が乖離しないように両者の印象を近づけるための調整を行いました。

まごつき モブキャラは、PCモニタやテレビなど何らかの画面を見ている様子を描こうというところからスタートしました。スマホで自撮りする女子高生、PCで仕事をしているサラリーマンとか。キーカラーや構図をできるだけ描き分けることを意識しました。特に同じような色味が連続しないように気をつけました。ちなみにVコンテの段階ではカット割りがもっと細かかったので、3世代の家族が集合写真を撮るカットなどボツになったものもあります(苦笑)

ぽぷりか モブキャラのシーンは、Blender上でカットアウトアニメーションを付けました。まごつきが描いてくれたイラストからキャラクターを切り出して、動きを付けられるようにパーツ分けと描かれていない箇所のレタッチ。それらのデータをBlenderに読み込んで3Dシーン化するという地味な作業のほとんどをおはじきが担当してくれました(後述)。






キャラクターと文字のバランス

キャラクターと歌詞を両立させるために全て手書き

ぽぷりか 身も蓋もありませんが、僕たちはデザインが苦手です(苦笑)。だけど、この作品では、キャラクター表現と歌詞のモーションどちらもしっかりと見て(認識して)もらえることにこだわっていたので、最終的に歌詞は全てまごつきに手書きしてもらい、歌詞のモーションデザインも全てキーフレームで手付けしました。

まごつき コンセプトアートの段階から歌詞を手書きしていたので、本番用の歌詞も手書きするというタスクが当たり前のように降りかかってきました(苦笑)。手書きですが、実はベースにした文字があります。「王道も」という歌詞に使った極太で手書き感のあるものですが、これだけだと単調に見えてしまうので、歌詞や単語自体の意味に合わせて、「空回り」なら内側の口を渦巻きにしたりといったアレンジを、ごちゃつかないように注意しながら加えていきました。事前に設計するのではなく、クリスタのキャンバスを開いて、その歌詞の文字から思ったものを即興で採り入れていくという要領でひたすら書いていきました。この段階では、後工程のことを考慮していません。「どのような動きを付けるのか知らんけど、ぽぷりかが良い感じに動かしてくれるだろう」と、信頼していました。

ぽぷりか 僕たち3人の間には自然と役割分担ができていると思います。だから僕も素材を受け取ったら映像として良くなることだけを考えて動きを付けています。



文字デザインのバリエーション化

和風のデザインを正攻法で採り入れた文字デザインの例。



英語の歌詞などは、あえて和風から離れたデザインを行なったりもしている。



文字本来の意味に着想を得たデザインの例。







カットの主要素を明確にする

カットのつながりや歌詞の内容などをふまえて、意図的にしぐれういの表情以外で構成したカットも随所に登場する。




視線誘導の活用

歌い始めの「shake a 火ぃ吹く pallettes」という歌詞のカットでは、画をネガポジ反転させつつ、一瞬だけ黒色の筆で描いたような横線を入れることで、ういの表情に目線が行くように演出。そして顔の周りに歌詞のモーションをレイアウトすることで、キャラクターと歌詞のどちらも認識できるように画づくりが行われた。






















Blenderで映像を完結させる

作業に集中できる環境を構築してトライ&エラーを効率的に行う

ぽぷりか 今回は、全編Blenderで作りました。リアルタイムレンダラのEeveeを使って、キーフレームやパラメータを設定したらすぐにフルコマで再生できる環境を構築することで、作業中にできるだけ集中が切れないように工夫しました。コンポジット作業と最終的なカット編集もBlenderで行いました。Blenderだけで完結することで、将来的に色々メリットがあると考えてチャレンジしました。例えば、After EffectsがわからなくてもBlenderさえ操作できれば素材の修正からコンポジットまでを誰かひとりで対応できる、などです。Blenderによるコンポジット作業はAfter Effectsとは異なる部分が色々とあるし、かなりクセがありますが、動作が軽いのが良かったです。

文字のモーションについては、移動・回転・スケール、そして文字の一部をメッシュ変形といういたってシンプルな処理しか使っていません。それらを組み合わせて動きを付けながら、物足りない部分にさらに細かい動きを加えていくといった要領でブラッシュアップしていきました。



Blenderによるコンポジット作業

歌詞のモーションデザインも含めて全てのアニメーションがBlenderの3Dシーンで付けられた。




Blenderのコンポジットワークはノードベースで行われる。After Effectsによるコンポジット作業とは勝手が異なる部分があるため、ぽぷりか氏はAEのプリコンポーズに近い挙動で扱うためのアドオンなども自作したという。


1:素組み




2:アウトラインを適用




3:歌詞モーションを合成




4:フレアなどフィルタ処理を合成




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カットアウトアニメーションもBlenderで

モブキャラのカットアウトアニメーションもBlenderで付けられた。イラスト素材のパーツ分けや背景の3Dシーン化など、一連の作業をおはじき氏が一手に引き受けた。腕や足に加えて、髪の毛や目なども細かくパーツを分けて動きが付けられるようにセットアップされた。








歌詞のモーションデザイン

まごつき氏がCLIP STUDIO PAINTで描いた歌詞の文字素材をBlenderに読み込み、ナイフツールで1文字ごとに分解。RGBのRチャンネルを使ってディザ合成でグラデーションを適用する。





モーションデザイン作業の例。3Dオブジェクト化した文字に対して、回転、拡大、メッシュ変形といった基本的な機能の組み合わせとのことだが、3Dシーンの特性を活かして動きに深みが込められた。





ラインアニメーションで余韻を残す

特別なモーションデザインの例。「線一本」という文字自体のモーションだけでは物足りなかったため、水平方向に伸びるラインアニメーションが追加された。




















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